- 外注した翻訳の書き直し
- 技術文献の英訳が意味不明
- 非常に安くて良い翻訳会社もあるのでしょうか
- 最初のサンプルは良かったのに、実際の翻訳は質が低い
- 世界中の言葉を扱う翻訳会社について
- 翻訳者に文章力が必要な理由

私の部下は、外注した翻訳をいつまでも書き直しています。なぜそんなに時間がかかるのでしょう。
外注した翻訳と、書き直した文章を比べてみてください。最初の翻訳に抜けがたくさんあったり、意味が原文と明らかに違う場合は、コストパフォーマンスを検討した上で、他の業者を探した方が良いかもしれません。しかし一般論として、翻訳の見直し作業には、かなりの時間が必要です。最初の翻訳に問題がない場合でも、原文と訳文を注意深く比較しながら一語ずつ読むためには、原文だけをざっと読む時の3倍以上の時間が必要です。また、日本語と英語では文法や表現が大きく異なり、対象読者に適切な言葉遣いや書式に調整する作業も必要なため、訳文の意味は正しくても、読みやすく自然な日本語に書き換える段階で苦労することもあります。戻る

技術文献の英訳を外注したところ、アメリカの取引先から「意味がわからない」という苦情が来ました。なぜそんな翻訳が出回っているのですか。
大きく分けて、理由は3つあります。(1)市場全体を見た場合、信頼できる日英翻訳者の数は、今でも充分ではありません。全体的に、アメリカ人翻訳者は日本語の読解力が不充分、日本人翻訳者は英語の文章力が不充分な傾向があります。(2)日本の翻訳学校の中には、技術文献の翻訳技術と称して、不自然な逐語訳を教えている所があります。(3)翻訳者の能力に問題がない場合でも、日本語で書かれた原文の内容が、英語圏では誤解を招く場合があります。アジア言語の文法は、英語と比べて曖昧な傾向があるためです。主語の省略、現在形と過去形の混用、単数と複数の曖昧さ、パラグラフ構成の欠如、句読点のない長い文などは、日本語では問題視されなくても、英訳すると非常に読みにくくなります。学術論文、特許出願書類などは、読みやすさを重視して翻訳後に編集することが可能ですが、裁判書類の場合は、原文の曖昧さを解消するための加筆は認められません。場合によっては、翻訳者が追記を行う場合があります。戻る

ある翻訳会社から見積を取ったところ、かなり安い料金でした。コスト面では良いことですが、質の面でやや不安も感じます。非常に安くて良い翻訳会社もあるのでしょうか。
高い料金を提示する会社が、質の高い翻訳を提供しているとは限りません。しかし安いことだけを売り物にしていたり、「最低の料金で最高のサービス」などと謳っている場合は注意した方が良いでしょう。どんなに技術が進んでも、翻訳は基本的に人間の手作業で行うため、工業製品のような大量生産による低コスト化は不可能です。改訂、校正の各段階でも、経験を積んだ専門家の目が必要です。信頼性の高い翻訳が、最低水準の料金で提供される可能性はないと言って良いでしょう。戻る

今使っている翻訳会社は、最初にとても良い無料サンプル翻訳を提供してきました。でも実際に納品されている翻訳はかなり水準が低いのです。何が原因でしょう。
こうした「翻訳会社」は、ほとんどの仕事を安いベンダーに委託しています。新規取引の前にサンプルを提出する時だけ優秀な翻訳者に依頼し、その後の翻訳は、底値の翻訳者を使って利益を確保しているのです。「低価格で最高水準」などと宣伝している会社には充分にご注意ください。 また、無理な納期も質が低下する原因になるので、原文を早めに送ることも重要です。戻る

アメリカには、世界中の言葉を扱うと謳った翻訳会社がたくさんあります。どうしてそんなことが可能なのでしょう。
こうした会社には、ベンダーと連絡を取るためのコーディネーターが常駐し、オンラインの翻訳者名簿に頼って必要な言語のフリーランサーを探しています。こうしたコーディネーターの役割は、一度に多国語の翻訳を依頼する場合には便利なものです。欠点としては、料金における手数料の比率が非常に高いこと、翻訳者の水準が不確かなことが挙げられます。戻る

どうして翻訳者に文章力が必要なのですか。原文と同じことを書けばいいのだから、訳が正確で、間違いがなければ良いと思うのですが。
文法や単語だけ読んで、ひたすら原文どおり「正確」に訳そうとすると、教科書の英文和訳ように不自然な文になってしまいます。英語と日本語の構造や表現は大きく違うため、自然に読める訳文を書くには、対象言語の確実な文章力が不可欠です。これは技術仕様書や契約書についても言えることです。戻る